【ミッツァイル殿堂に寄せて】赤青とシータはどちらが強かったのかの一考察

by 神結

12/31を最後に、《BAKUOOON・ミッツァイル》は殿堂する。

流れ星ような奴だったなぁ

思えば2019年はミッツァイルの年だった。環境トップを譲ったのは『アナカラーダムド』全盛だった8~9月のわずか2ヶ月ほどで、登場後は『赤白轟轟轟』から『赤緑ジョー星』が大活躍を見せ、そして秋以降は『シータミッツァイル』『赤単ブランド』『赤青ミッツァイル』等、もはやその価値は揺るぎないものとなった。シーズン終盤にはヘイトも数多く集め、「殿堂はほぼ間違いないと予想したユーザーによる買い控えや売却が続き、バリバリ使われているのに価格が下落する」などの珍事も発生した。

新年になって殿堂制限によって1枚になっても依然強力なカードなのはもちろん間違いない。しかし『赤青ミッツァイル』の壊滅は免れず、『シータミッツァイル』も形を変えての再構築を求められるだろう。

さて、ここから書く内容は競技をやる上で直接的には何ら関係のない話にはなる。余興以外の何物でもない。だが或いは、遠い何処かの誰かに役に立つ日が来るかもしれない。だから考察の1つとして、ここに書き残しておこうと思う。

『赤青』も『シータ』も、非常に強力なデッキだったのは皆の知るところである。一時は環境を二分したといっても過言ではなかっただろう。或いは、『カリヤドネ』と含めて3強か。後に『バルガ』や『ハンデス』といったデッキも台頭してきたが、《“魔神轟怒”万軍投》が登場してからしばらくは二強環境だった。

ではこの2つのデッキは、果たしてどちらが“強いデッキ”だったのだろうか? 今回はそれを考察したい。



相対的な強さと絶対的な強さ

長らくTierランキングを支配し続けたお前たちとも流石にお別れだろう

「赤青とシータ、対戦したらどっちが勝ちますか?」

この質問を投げれば、多くの人は「赤青」と答えるだろう。シータが勝つには、大抵は2ターン以上《「本日のラッキーナンバー!」》を続けた上で《BAKUOOON・ミッツァイル》を投げる必要があり、これを実行するだけのリソースをシータが赤青に対して確保するのは非常に難しいものがある。

また「CSに出た時に赤青とシータ、環境的に勝ちやすかったのはどちらか?」という質問であっても、答えは比較的「赤青」に寄る筈だ。それは環境の上位デッキが赤青、カリヤドネというシータにとって不都合なデッキが多く、有利なデッキが多い訳ではない。そもそも「シータに勝てる」を大前提としたデッキしか環境に残らなかったのだから、ある意味当然と言える。

だがこれを以てして「赤青はシータより強いデッキ」と断言するのは早計だ。

何故ならば先に挙げた2つの質問は、赤青の「相対的な強さ」しか示していないからだ。「シータと対戦した場合」「CSで環境デッキとぶつけた場合」に於いての、つまり他者と比較した上での赤青の優位性を表現したものである。

私は強さには二種類あると思っている。1つがいま挙げた「相対的な強さ」であり、対してデッキの最高出力・平均出力を吟味した上での「絶対的な強さ」も一種の強さである。これはしばしば広義の意味で「デッキパワー」などと表現されることもある。

相対的な強さ」については、圧倒的に『赤青』が上であったことに、異論は無い。

もちろん、最速3キル可能な赤青も、安定して5ターンには敵を確殺するシータも、絶対的な強さを十二分に備えていると言える。先に少し触れたが、シータの強さを示した1つの例として「シータに勝てなかったデッキを環境から駆逐した」というのがある。つまり環境デッキの門番としての役割を担っていたわけだ。これが出来たのは、シータに「絶対的な強さ」が備わっていたからだろう。

さて、前提が長くなったが今回の考察は『赤青ミッツァイル』『シータミッツァイル』の2つで、果たしてどちらが「絶対的な強さ」が高かったのか、というものだ。

その為にもまずは、両者のデッキの違いを確認していくこととする。

大将首を目指す赤青と包囲殲滅を目指すシータ

赤青とシータは、その根本的な戦い方やゲームエンドの方法が異なっている。

ざっくり言えば赤青は小型ジョーカーズとGRを生かし、その連携を以て戦うデッキであり、対してシータは優秀なマナドライブ6のカードを駆使して戦うデッキだ。

またフィニッシュについても、両者は違った顔を持っている。

赤青は《ジェイ-SHOCKER》や《無限合体 ダンダルダBB》+《「本日のラッキーナンバー!」》で相手の急所を突くことでゲームを終わらせる。対してシータは《音精 ラフルル》や《無双と竜機の伝説》等で完全に相手の息の根を止めてゲームを終わらせることが可能だ。

どうしてそうなっているかというと、これはデッキに積んでるエンジンの大きさが違うため、出来ることが異なるのだ。

赤青の強みは速度と連携であって、デッキに積んでいるエンジンは決して大きなものではない。だからこそ取り回しは楽な分、大きな出力は発揮できない。以前は《ジョジョジョ・マキシマム》等も積まれていたが、それを使いこなせるほど器用なデッキではなかった(例えば初手にこのカードを引いてしまった場合は、その使用を諦めざるを得ない場合が多かった。《回収 TE-30》を入れたデッキもあったが、《夢のジョー星》の使用条件を阻害するため賛否のわかれるカードであった)。身長1.5mの人が2mの刀を振るうのは難しい。しかし大抵の敵は30cmの短剣で倒せるのだから、特に問題はない。これが赤青の主張点である。

対してシータの場合はというと、長いゲームや先に攻められることをも加味して設計されている。その分使えるカードも多く、積むエンジンをより大きく出来たわけだ。致命的に多色が許容出来ない赤青と違ってシータには一定枚数の多色も許されるし、マナに置いたカードの使用を諦める必要もない。2mある鬼のような存在なので、1m近い金棒を振り回すことも可能という寸法だ。多少小回りは利かなくとも(実際は《DROROOON・バックラスター》などで小型除去による制圧も可能だった)、それで殴れば例外なく倒せる。これがシータというデッキの主張である。

ちなみに大抵の場合、戦闘に於ける勝利条件は大きく2つある。1つは敵大将の首を取ることで、もう1つは敵を全滅させることだ。

言うならば、最も効率的に敵の大将首を取ることを目指して設計されたのが赤青であり、対してシータは敵軍を丸々包囲殲滅させることで勝利を目指すよう設計されているわけである。

引用元:読書と映画 ガーディアン ~ハンニバル戦記~ より

カンネーの戦いの使われた包囲殲滅戦術。デュエマは前の試合の結果を持ち越す訳ではないので、殲滅をする必要はないのだが……。

 

さらに『北斗の拳』で例えるならば、赤青は相手の秘孔を突く北斗神拳であり、シータは外部からわかりやすく相手を破壊する南斗聖拳なのだ。秘孔を突くための手段が《ジェイ-SHOCKER》であったり《「本日のラッキーナンバー!」》であり、《DROROOON・バックラスター》や《エモG》は南斗聖拳の象徴的カードである。

勝つためにはどちらを選んでも問題ない。むしろ、赤青の方が効率は良い。

しかし、実はこの勝利を達成するための難易度には大きな違いがある。結論から言うと、急所を突くのも大将首を取るというのも、並大抵のことではないのだ。

多くのデッキに負けないデッキ=絶対的な強さ

少し具体例から入ろう。

私は旧殿堂最後のCSで『赤青』を使い、『ナウ・オア・ネバー』に対し敗北した。3ターンで展開を決めたはいいが《「本日のラッキーナンバー!」》がなく、やむを得ずに攻撃したら《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》と《ドレミ団の光魂Go!》を踏んで次のターンに《ファイナル・ストップ》を撃たれて負けた、という顛末である。ちなみにナンバーを引けていたところで宣言しただろう数字は間違いなく「5」であったため、敗北の結末は変わっていない。

実はこの日は他にも、『覇道』に対して《ジェイ-SHOCKER》で3を宣言しながら攻撃したらその1点で《SMAPON》を踏んでしまい打点が足りなくなって敗北している。

要は大将首を目指して突撃したら、返り討ちに遭ったわけである。実際、敵本陣を目指して突撃というのはリスクが高く、失敗するとそのまま敗北に直結する。我々は桶狭間の戦いで織田信長が今川義元の本陣に突撃を成功させたのを知っているが、歴史上には同様の試みをして失敗し、そのまま歴史の闇に埋もれた例がいくつもあるだろう。同じように、勝利した赤青プレイヤーの裏には似たような敗北をしたプレイヤーが多数いたはずだ。

北斗神拳も、失敗してしまうとちょっと痛いツボ押しマッサージである。

対して先に挙げた2つの敗北はともに『シータ』なら回避出来ている可能性が高い。《音精 ラフルル》なら先の『ナウ・オア・ネバー』の受け札は貫通しているし、唯一の裏目の《サイバー・I・チョイス》だけを《「本日のラッキーナンバー!」》で止めればいい。《SMAPON》にしても、《スゴ腕プロジューサー》などの打点が残りやすいシータであれば、そのまま殴り切れたであろう。

それはシータというデッキが、敵の防御ギミックと当初から戦わないというコンセプトを元に作成されているからだ。

北斗の拳の話に戻ると、赤青は《「本日のラッキーナンバー!」》の効かない聖帝サウザーに当たってしまった場合は緒戦での敗北は必至で、対してシータであれば、秘孔が逆だろうがなんだろうが圧殺するため、比較的勝利の道筋が描きやすい。

この画像の面白さを北斗未見の人に説明する場合、北斗の全ての背景を説明しなければならないため結構めんどい

こうした意味で、『シータ』というデッキは平均的に多くのデッキに勝ちやすい。

故に私は『絶対的な強さ』という観点で見たときは、『赤青』より『シータ』の方が優れていたように思う。

もっとも最初に示した通り『相対的な強さ』という点では明らかに『赤青』が勝っており、加えてこのゲームを攻略する上では『相対的な強さ』の方が必要であることが多い。CSに参加していたときは私は専ら『赤青』を使っていた。そしてその判断は、何ら間違っていないと思っている。実際劇中でも、とうとう南斗聖拳では北斗神拳に勝てなかったのだから。

個人的な結論

最後に、私の結論を以下にまとめておく。

相対的な強さ:圧倒的に『赤青』
絶対的な強さ:『シータ』に分がある

あと北斗の拳は面白いから読んで。ラオウ編まででいいから。


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