【デュエマ】GP9thのお話 ~水面下の戦いの果て~【GP振り返りシリーズ】

1つの強大なデッキと、それを倒すための水面下の戦いがあった――

 

長い長いGPヒストリーも、遂に最終回を迎えました。

 

というわけでこんにちは、神結です。

殿堂解除選手権と並んで長いシリーズになってしまいましたが、ここまで付き合っていただいた読者の皆様、本当にありがとうございます。

それでは、振り返りシリーズのラスト、いってみましょー!



GP9thの基本情報

開催日:
2019年10月5日

会場:
ツインメッセ静岡

参加者数:
2,142名

プロモ
TOP8:《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》
TOP128:《音奏 プーンギ》
参加賞:《霞み妖精ジャスミン》

いよいよ最終、GP9thです。

今回の会場は西と東の間の静岡。MTGなどもでグランプリが開催されている、カードゲーム的にも由緒正しい会場です。

ちなみに当日はギリギリまで台風が直撃される心配があったのですが、なんか上手く躱しました。当時は「大型大会が中止されたら経済的ダメージとかヤバいだろうなぁ」とか考えていたんですが、翌年もっとヤバいことが起きました。

さて、レギュレーションは魂の殿堂構築(現アドバンス)でした。前々回は2ブロ、前回は2day開催だったのを考えるとシンプルな殿堂構築も久々でしたね。そういった事情もあってか、各コミュニティが気合いをいれてデッキ制作に挑みました。

 

GPプロモは《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》。GP2ndくらいからプレイヤーの間ではずっと「VANは優勝プロモになりそう」と言われていましたが、9thになってようやく実現です。ただし、当時は超天篇。「VANなんか今更誰が使うねん……」みたいな反応でした。2021年がVANが飛び交う環境になるなんて、想像もしなかったですね……。

TOP8の《音奏 プーンギ》も夏までは猛威を奮っていたものの当時はすっかり旬を過ぎ、受け止めとしては微妙。まあ、イラスト等を発注したときはかなり使われていた訳なので、プロモの選定とは難しいものです。《霞み妖精ジャスミン》は、逆にまだGPプロモになってなかった方が寧ろ驚きみたいなところがありました。

 

ちなみにGP9thは私も選手にカバレージにと参加させていただきました。選手で早期に敗退したプレイヤーがちゃっかりライター席にいるというのは、これも大会の風物詩みたいなところがありますね(ライター同士でしか伝わらないけど)。

 

事前メタゲーム予想

GP9thの1つ前の大型大会、超CSⅢでは【アナカラーデッドダムド】が猛威を奮っていました。

このデッキは《虹速 ザ・ヴェルデ》+《SSS級天災 デッドダムド》のお陰で盤面にクリーチャーを並べるデッキには有利」とかいうデュエマのルールを否定するような訳のわからん性能をしていました。元となった【アナカラーデッドゾーン】を始め、従来のアナカラーが抱えがちだった「デッキが安定しない」と言う問題も《天災 デドダム》が解決してしまいました。

フィニッシュも《禁断機関 VV-8》のお陰で安定しており、対抗出来るデッキといえば【ロマノフワンショット】だとか【青魔導具】のようなちょっと特殊なワンショットデッキくらいでした。

そんな環境の中で、超天篇第3弾『魔神おこせジョルネード』が9月21日に発売されます。

この弾はデュエマの歴史を振り返ってみても、相当に“ヤってる“パックでした。

せっかくなので、そのカードの一部を紹介していきましょう。

・《“魔神轟怒”ブランド》
・《Code:1059》
・《ジョリー・ザ・ジョルネード》
・《魔導管理室 カリヤドネ/ハーミット・サークル》
・《生命と大地と轟破の決断》
・《DROROOON・バックラスター》
・《瞬閃と疾駆と双撃の決断》
・《極幻空 ザハ・エルハ》
・《スゴ腕プロジューサー/りんご娘はさんにんっ娘》
・《葉鳴妖精ハキリ》
・《白皇世の意志 御嶺》
・《せんすいカンちゃん》
・《天啓 CX-20》
・《マリゴルドⅢ》
・《続召の意志 マーチス》
・《ダダダチッコ・ダッチー》
・《ジェイ-SHOCKER》
・《BUNBUN・ヴァイカー》
・《解罪 ジェ霊ニー》
・《*/弐幻サンドロニア/*》 etc……

とりあえず思い付く限りでざっと並べてみました。環境で使われた、というカードであればもっと増えます。

で、このパックの発売からわずか2週間でデッキを作るわけです。各チーム、2週間でデッキを仕上げるべく様々な調整、研究を重ねていくことになりました。

……ひとつ、フライングがありました。

それが【シータミッツァイル】でした。

このデッキはとあるプレイヤーが試作段階で使用したCSで入賞、そしてそのCSがリスト強制公開だったために一気に全国的に広まりました。

実際似たようなデッキは皆考えてはいたと思うのですが、《ハリケーン・クロウラー/ブレイン・チャージャー》によるマナアンタップのギミックなどは、私もなるほどと思った記憶があります。

そしてこの【シータミッツァイル】は極めて強力だったこともあり、当然のように環境トップに上り詰めます。

このデッキは《知識と流転と時空の決断》を《Wave ウェイブ》で唱えることで4体のGR召喚をし、そこから一気に《BAKUOOON・ミッツァイル》まで1ターンで展開することを主の動きとしていました。要するに「展開」と「フィニッシュ」までを1ターンで完遂することで、【アナカラーデッドダムド】の得意とする「盤面破壊」を許しません。ダムドはこうしたデッキに対して、別のアプローチをする必要がありました。

またGRも新能力であるマナドライブの影響で、一気にバグりました。《天啓 CX-20》や《マリゴルドⅢ》がその最たる例でしょう。なんか展開するだけでついでに3ドローしたり、ついでに《音精 ラフルル》が場に出たりするようになってしまいました。

そうこのデッキって「単騎ラフルル」も出来るんですよ。盾から頑張るデッキは鼻で笑いながら屠られることになってしまいました。

というわけで、事前予想ではこの【シータミッツァイル】が堂々のトップ。

次点としては差を付けられてしまったものの【アナカラーデッドダムド】か、もしくは新弾で強化の入った【赤単ミッツァイル】でしょうか。

【赤単ミッツァイル】は《“魔神轟怒”ブランド》の加入によって、使う決断をした人も多かったのではないでしょうか。

実際、《“魔神轟怒”ブランド》はGRクリーチャー。赤単ではGRを全て場に出せるわけでもなく、ランダム要素の強いことに変わりはありません。つまり、《“魔神轟怒”ブランド》によって相性がひっくり返ったということはないんです。

ですが、もつれた試合や相手の盾が強いときにでも《“魔神轟怒”ブランド》なら突破してくれます。

「なんかあっても、アイツを捲ればなんとかなる」。《“魔神轟怒”ブランド》の存在は、プレイヤーに使う勇気を与えたと言っていいでしょう。

 

事前に有力候補として上がってたのはこの辺りまででしょう。他のデッキは、どうしてもシータの壁が厚く、付けいる隙が少なそうでした。

ただしそうした「事前メタゲーム予想」を元に答えを出してくるのが、トッププレイヤーたちがトップである所以でもあるのです。

GP9thは、それが如実に出た大会でもありました。

当日の結果

優勝
イヌ科(青黒カリヤドネ)

準優勝
ゲルネウス(赤単ミッツァイル)

3位
よしゆき(青黒カリヤドネ)

4位
アーチー(メルゲドッカンデイヤー)

なおベスト8は以下の結果となっています。

ベスト8
リヒッコ・チュリス(赤単ミッツァイル)

ころっけ(赤単ミッツァイル)

てえし(ロマノフワンショット)

16(シータミッツァイル)

赤単の躍進やシータの伸び悩みがある中で、本GPにて初お披露目されたデッキが躍進を果たしました。

要するに各陣営は、メタゲームを研究しながら密かに刀を研いでいたわけですね。

こうした“水面下の戦い”が繰り広げられたのも、本GPの特徴です。

最後は赤単の攻撃を有名な《知識と流転と時空の決断》の2枚トリガーで逆転したイヌ科が頂点に輝きました。

 

それではいつも通り、各アーキタイプごとの活躍について振り返ってみましょう。

キーワードは「《「本日のラッキーナンバー!」》」です。

 

シータミッツァイル

下馬評ではメタゲームの中心であり、最大数であるとされました。

そして実際その通りとなり、TOP128のうちその3割近い38名がシータミッツァイルを使用していました。

しかし最終的にTOP8には1名と、思ったほどの戦績は残りませんでした。

 

(GP9th ベスト32 るるる)

最終的に勝てなかった理由は、上位に残ったデッキが「対シータミッツァイル」を想定していたからでしょう。

赤単は非常にわかりやすく速度で、それ以外のデッキは《「本日のラッキーナンバー!」》でシータの展開を阻害出来ます。環境上で許された、数少ないGR召喚の妨害カードです。

シータ自身もナンバーを積んでいるんですが、リソースの作り方をGRに依存しているシータはGR召喚を封印されるとデッキとしてチャージエンドするレベルで何も出来なくなってしまいます。

そして、《「本日のラッキーナンバー!」》を比較的自由に撃てるデッキが存在しました。

 

青黒カリヤドネ

GPまで秘匿され、そして見事優勝を勝ち取ったのが【青黒カリヤドネ】でした。

謎DM集団「マラかっち」で開発され持ち込まれたこのデッキは、優勝と3位を輩出するという安定感にも秀でたデッキでした。

 

(GP9th 優勝 イヌ科)

新弾で登場した《魔導管理室 カリヤドネ》を使ったループデッキです。コストは14ですが、墓地にある呪文の数だけ召喚コストが軽減出来ます。

「初見での対応の難しさ」「ループという安定した勝ち筋」「ループしなくともスコーラ―ナンバーで殴れる」という“強いデッキ“の条件を満たしています。ちなみにこのデッキの強さを物語るエピソードとして「よしゆきはほぼループせずに殴って勝った」というものがあります。それはそれでどうなんだ。

また何より、このデッキは《「本日のラッキーナンバー!」》をもっとも上手く使う事が出来ていました。シータを始めとした他のデッキが手札をカツカツにしながら撃ってるのに対して、このデッキはルーターで悠々と手札を揃えながらナンバーを撃てますし、なんなら墓地に呪文が溜まるのでナンバーを撃ったらフェアリーライフもオマケについてきます。

 

そんな強力なデッキは次々とライバルたちを打ち破り、決勝では劇的な展開をへて頂点を制したことは、記憶に新しいでしょう。

DMGP9th 決勝戦:イヌ科(大阪) vs. ゲルネウス(宮崎)

結論としてこのデッキは秘匿されただけあってそれに恥じない強さを持っていました。そしてGP専用の初見殺しデッキで決してなかったことも、プレイヤーたちは思い知られていくことになるのです。

 

赤単ミッツァイル

このデッキもよく頑張りました。若きリヒッコ・チュリスが、Zweilanceやdottoといった強豪プレイヤーたちを打倒していったのも、本大会の1つのハイライトでした。

そして最終的に、ゲルネウスが決勝の舞台に立ち、優勝まであと一歩のところに到達しました。

 

(GP9th 準優勝 ゲルネウス)

 

いつの時代も、速度で押すのは大事です。実際、【アナカラーデッドダムド】なんかはこの速度についていけませんでした。【シータミッツァイル】も赤単には《スゴ腕プロジューサー/りんご娘はさんにんっ娘》のトリガー有無が大きく影響し、ネイチャーを使ったループ系にも、【青黒カリヤドネ】なんかにも相当勝てる部類ではあった筈ですが……。

しかし、どんなに環境だったとしても、赤単は赤単。

「大型大会で赤単を使用する」ことのリスクは計り知れません。何に当たるかわからない、どんなトリガーが採用されているかわからない……。そんな中で、赤単の使用を決断した人たちの勇気と覚悟を、私は称賛しようと思います。

 

《生命と大地と轟破の決断》系のデッキ

さて、もう一つ取り立てて言及しておきたいのが《生命と大地と轟破の決断》です。

事前にカード情報が出た時点から相当に騒がれたカードでしたが、GPに向けてしっかり仕上げてきましたね。

【緑単ネイチャーループ】なども活躍しましたが、やぱり特筆すべきは【メルゲドッカンデイヤー】でしょうか。アーチー選手が4位という成績を残しています。

 

(GP9th 4位 アーチー)

《逆転のオーロラ》でシールドを全てマナに変換し、そのまま《生命と大地と轟破の決断》から《アクア・メルゲ》と《MEGATOON・ドッカンデイヤー》を並べてそのままループを決めます。《アクア・メルゲ》は当時は殿堂カードでしたが、そこは《神秘の宝箱》でカバー。盾落ちしているならオーロラを撃つだけで完結しています。

デッキの詳細なギミックは省略しますが、GRを出していく過程で予知でデッキを固定して《早撃人形マグナム》を《ダダダチッコ・ダッチー》で確定で捲るなど、作り込みを感じられます。またノートリガー構築ながら、赤単相手にはオーロラを経由せずにネイチャーからデイヤーを並べ、《“魔神轟怒”ブランド》+《ソニーソニック》を並べることでカウンターを決めることも可能でした。デッキビルダー栁の魂の一作、といったところでしょうか。

このデッキは事前のメタゲーム予想と照らし合わせるなら充分過ぎるほど強力です。

しかし、このデッキには――というより、《生命と大地と轟破の決断》を使うデッキには弱点がありました。

はい、やはり《「本日のラッキーナンバー!」》ですね。

どうしてもね、ナンバー5宣言が辛すぎるんですよね……。実際、3位決定戦でカリヤドネと対峙したとき、ネックになったのはその部分でした。本当に僅かながら、その差で決してしまったと言っていいでしょう。

 

ちなみにGP9thのメタゲームブレイクダウンを私が担当しておりますので、もしよかったら目を通してみてください。

DMGP9th:決勝ラウンド メタゲームブレイクダウン ミッツァイル躍進、ダムド後退の中で ~見えない敵を討て!~

まとめ

というわけでGP9thの振り返りでした。

GPヒストリー、長く掛かりましたがこれにて一旦完結です。

10thの開催を待ちながら、これまでの記事も振り返っていただけると嬉しいです。

 

それではまた殿堂解除選手権でお会いしましょう。(※編集注 この下書きは2021年12月に書いたそうです)

 


 

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