【デュエマ アドカレ2025 裁 11日目】孫子の兵法とデュエル・マスターズ

はじめまして、神結といいます。

普段は公式カバレージなど、様々な媒体でデュエマの記事を書いています。

今回は、主催のあーくんさんに誘われて「デュエマAdvent Calendar2025」の裁の11日目を担当することになりました。よろしくお願いします。

企画の概要はこちらから。

また今回、flat-工房blogさんの方にお願いして、こちらのブログで掲載させていただけることになりました。ありがとうございます。

内容についてですが、タイトルの通り「孫子の兵法とデュエルマスターズ」になります。

孫子の話

デュエル・マスターズは対人ゲームであり、対戦ゲームです。

対人・対戦ゲームというのは即ち相手と戦うことに他なりませんが、こと「戦い」という行為については、人類は誕生以来ずっとこれを継続しています。

つまるところ、「戦い」について人類は数々の先行文献を有しており、これはこれで生かさない手はないだろう……というのが、今回の記事の目的になります。

さて、その中で取り上げるのが、恐らく日本でも最もメジャーな兵法書である『孫子』になります。

『孫子』は古代中国、春秋時代の人物である孫武が書き記した兵法書であると言われています。ちなみに本家中国より日本の方が愛好家が多いようです。

メジャーなところでいくと、武田信玄が風林火山の旗を掲げていたとされていますが、その風林火山の出典が『孫子』になります。余談ですが上杉謙信がガチ冷笑派だったら「うおw教養w」って言ったかもしれませんが、彼は彼で関東管領の役職遂行のために越後から小田原まで駆け抜けた熱血派なので、たぶん大丈夫でしょう。

さて、『孫子』は全13章あります。

うち後半部分については戦術論に近く、流石にこれはデュエル・マスターズに転用して考えるのは難しいと思います。例えば、第13章では火攻めの有効性を説いていますが、流石にこれはね。有効すぎるかもしれないけどさ。

ですが前半の数章に関しては戦略的な観点からの戦いについて説いており、この点に関しては大会に参加する上でも相応の示唆があるなと感じております。そのうち、私が面白いと思った部分について引用し、簡単に解説できればと思います。

(なお戦術と戦略の違いについては、当ブログの「用語集」より、「戦略的ハートバーン」の項目で軽く触れているので、スクショを貼っておきます)

孫子の兵法とデュエル・マスターズ

『孫子』は兵法書であり、戦争に勝つための戦略・戦術を説いています。

当然ながらここから読み取れるのは「勝つための手段」です。つまり、別にデュエマを楽しむ上では必要ありません。そこはご承知おきください。

ちなみに、デュエル・マスターズにはちゃんと《兵法のサトリ 孫子》というカードが存在しています。

  • 自分の他の無色クリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを1枚引いてもよい。

フレーバーテキストの元ネタは「百戦百勝は、善の善なる者には非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」でしょう。

内容としては「自分の力を保全したまま勝つ」というよりかは、そもそも「戦い以前に相手の意図を挫き、戦いそのものを起こさせない」といった解釈であるようで、これを教団の信仰と組み合わせているのはだいぶ“してやったり”なフレーバーテキストに思います。

なおHP上だと、フレーバーテキストが「智力のサトリ 龍樹」(どらんじゅ?)になっています。何故なのか。

兵とは国の大事なり

デュエ意訳)実戦のプレイ云々以上に、準備段階の方が大事なのではないか?

そもそもの話ですが、『孫子』の兵法書とは、兵法に関する記述は全体の一部であり、そうでない部分は原則や準備といった部分に多くの文言を割いています。

それは「兵とは国の大事なり」で表れている通り、戦いそのものが国家の一大プロジェクトだからです。

兵法書というと「弱者が強者に勝つための手段」というようなイメージがあるかもしれませんが、『孫子』の考え方は「基本的に勝算が多い方が勝つのは当たり前なので、準備段階として勝てるための国家・軍隊を作らないといけない」というような話になります(算多きは勝ち、算少なきは敗る)。

だから踏まえて、大大大前提として、準備の大切さを説いています。

これはCSに出ていても思うことなのですが、現代デュエマにおいて試合が始まってから出来ることって少ないと思うんですよ。貴方のプレイで勝った試合って、予選6試合戦って、1試合あるかないかとかだったりしませんか? もちろん小さなミスみたいなのはありますけど、勝敗に直接影響があるわけではなくて、ただ自分の反省点として消化するケースが多いように感じます。

そういう意味では、試合が起こってからよりも試合前にいかに準備を費やすか、といった話になります。

それはもう、大会に関わるもの全てです。会場、会場の最寄りのコンビニ、スリーブの入れ替え、予備スリーブの持参、そしてもちろん環境の把握や地域ごとの流行などなど。

準備っていっぱいありますね。

兵とは詭道なり

デュエ意訳)対戦とは、相手の裏をかくもの

こちらは特に『孫子』で有名な言葉ではないでしょうか。詭道とは、騙すこと、騙し合いみたいなイメージで捉えていただいてOKです。

誤解のないように先に明示しておきますと、デュエル・マスターズには競技イベントルールが制定されていますし、非紳士的行為は慎むべきものです。また、ルール違反ではないことを全てやっていいわけでもありません。紳士的なプレイをしましょう。

その上で「相手の裏をかく」というもの自体は、そのゲームが何であれ、対人ゲームの1つの醍醐味でしょう。

デッキブラフを張る、特定のカウンターカードをずっと見せずに隠す、テンプレにないカードで相手を刺す……。

実際、意識外のカードというのが相手に一番刺さりやすいです。こういうのはテンプレリストが誰でも共有できる現代だからこそ効果的な「詭道」であるような気がします。

実際、マナ置きミス1つで勝敗が変わるのもまたデュエル・マスターズですからね。

兵は拙速を聞くも、未だ巧久を見ざるなり

デュエ意訳)多少ミスっても早くプレイした方がよくて、めっちゃ長考するけど上手いみたいなプレイヤーは見たことない

『孫子』本文では、戦争は莫大なリソースを使うのでさっさと切り上げるべきであり、多少粗があっても速いというのはそれだけでよいことであり、逆に巧く長く戦ってよかった例というのを見たことがない、と言っています。

デュエル・マスターズの対戦において、どんなデッキ・どんな相手であっても不変であり、かつ相手と共有するリソースがあります。試合時間です。

試合時間が切れる=両敗という実情から考えると、プレイが早めることは「ゲームに勝つ」という目標に対する的確なアプローチだと言えます。

踏まえてですが、上手い人は速いことが多いです。逆に、長考が多いけど上手いプレイヤーっていうのは、正直見た記憶がないです。

だいたいは第一感のプレイが正しいことが多いです。

実際問題、速いというのは練習を積んできた証であり、自身のデッキへ理解度や対戦相手のデッキとの大局観をその場で考えずともわかった上で対戦に臨んでいるという話でもあります。

結局「準備が一番大事」という話に繋がってくるのだとは思います。

よりデュエマにアプローチするなら、ターンごとに深く考えて完璧なプレイをしないと勝たないデッキは使わない方が賢明ということにも繋がるのかもしれません。拙速でも勝てるデッキこそが至高。

勝兵は先ず勝ちてしかる後に戦い、敗兵は先ず戦いてしかる後に勝ちを求む

デュエ意訳)勝ってたので勝った!

『孫子』の基本的な考え方としては、「戦争は勝つべくして勝つ状況を作るもの」といった方向性であると私は解釈しています。上の文をざっくり訳すと「勝つ兵というのはそもそも戦う前から既に勝ちの状態を作っていてその後に戦い、負ける兵というのはとりあえず戦いが始まってから勝つ方法を考える」みたいな感じでしょうか。

ですので、要するに「勝ってたので勝った!」です。

もしお互いが同じ兵数、同じ戦術で戦場でぶつかったとき、勝敗はガチの運ゲーになります。多くのデッキで、同型戦が先後手の運ゲーになるのと近しいものがあるでしょう。

しかしGPで勝ってる奴は同じと言われているように、勝っているプレイヤーは自分が勝てる状況を作っているわけなんですよね。

となるとやはり、デッキの選択でしょうか。

デッキ選択は、戦場に引きずり込まれる前の準備段階でも最も相手と差を付けられる要素と言えるでしょう。デッキの相性差が、一番デュエマでは覆りにくい勝敗要素だと考えています。

ただ『孫子』の時代を生きた人々は「敗北≒死」という常に真のデュエルをさせられているわけなので、さすがに気軽にCSに行く我々とは心持ちが異なります。

別に我々は運ゲーを仕掛けて問題ないのです。それもデュエル・マスターズなのです。

何を教科書とするか

先にも書いたように、『孫子』は全13篇とそれなりに文量があり、それぞれ解説をしていくと本一冊の文量になりかねないので、一旦これくらいの触りの部分を紹介させていただきました。

興味のある方につきましては、『孫子』自体は古典なのでネットをググれば原文も書き下し文も、有志による翻訳も読めますので、是非そちらを参考にしてみてください。解説などをしている動画とかもありますからね。

 

さて、色々書いてきたのですが「そんなの別に古典の引用をしなくてもデュエマをやっていたら普通に考えていることじゃない?」みたいな話も、あるんじゃないかと思います。

それはその通りです。でも別に構いません。

実際のところ、今回は『孫子』を例として紹介した訳ですが、これは別になんでもいいです。クラウゼヴィッツの『戦争論』でもいいですし、別に戦いに関するものである必要もないでしょう。例えば、メンタルに関する研究書なども、大会に出る上では役に立つのではないでしょうか。

もっと言えば、別に書物でなくてもいいです。書物が一番纏まってて、わかりやすいと私は思っていますが。

何が言いたいのかですが、人類のこれまでの蓄積はデュエマに役立てることができるという話です。世の中には無数の題材・文献が転がっておりますので、そういったものを参考にしつつデュエマに取り組んでみるというのも、新たな視点を取り入れるという意味で有効なんじゃないかと考えています。

TCGというのは耐えず環境が変化するものであり、新しいデッキの練習・相性の確認・リストのブラッシュアップなど、無限に時間を食われます。

だからこそ、不変的な知見を学ぶことは、一見遠回りですがトータルで言えば時間の削減に繋がる行動であり、プラスに働くのではないでしょうか。

何処かで得た知見が、何処かで貴方を救うかもしれません。

 

ちなみに私は、『孫子』に救われたことがあります。

というのも、アドカレの〆切日の朝までロクにテーマが決まっていなかった中でも記事を完成させることが出来たのは、『孫子』の恩恵に他ならないですからね。

 

というわけで、今回はここまで。

明日は有坂リョウくんの「 DMPがやっているゲン担ぎ、全部やれば流石にCS優勝できる説」になります。お楽しみに。

それでは、また。

参考文献

浅野裕一『孫子』講談社学術文庫 1997

(なお、本文中の書き下し文については、上記の参考文献から引用した)


カードの購入・予約はこちらから

カードの買取に関する情報は専用買取アプリから

※使い方はこちらの記事を参照ください

予約中の新弾

王道vs邪道 デュエキングWDreaM 2025

トレカ(デュエルマスターズ)【BOX】デュエル・マスターズTCG 王道vs邪道 デュエキングWDreaM 2025 [DM25-EX2]

王道W 新弾

王道W 第3弾 邪神vs時皇 ~ビヨンド・ザ・タイム~

トレカ(デュエルマスターズ)【BOX】デュエル・マスターズTCG 王道W 第3弾 邪神vs時皇 ~ビヨンド・ザ・タイム~ [DM25-RP3]

ドリーム英雄譚デッキ ボルシャックの書

トレカ(デュエルマスターズ)デュエル・マスターズTCG ドリーム英雄譚デッキ ボルシャックの書 [DM25-BD1]


ドリーム英雄譚デッキ アルカディアスの書

トレカ(デュエルマスターズ)デュエル・マスターズTCG ドリーム英雄譚デッキ アルカディアスの書 [DM25-BD2]

デュエマを始めるならこれ!

いきなりつよいデッキ 力の王道

トレカ(デュエルマスターズ)デュエル・マスターズTCG 2025年4月いきなりつよいデッキ 力の王道 [DM25-SD2]

いきなりつよいデッキ 技の王道

トレカ(デュエルマスターズ)デュエル・マスターズTCG 2025年4月いきなりつよいデッキ 技の王道 [DM25-SD1]

「ドラゴン娘になりたくないっ!」Jack-Pot-Live!! in 桜龍高校

トレカ(デュエルマスターズ)デュエル・マスターズTCG キャラプレミアムデッキ 「ドラゴン娘になりたくないっ!」Jack-Pot-Live!! in 桜龍高校 [DM25-SP1]

にじさんじコラボはこちら!

にじさんじコラボ・マスターズ「異次元の超獣使い」

トレカ(デュエルマスターズ)【BOX】デュエル・マスターズTCG にじさんじコラボ・マスターズ「異次元の超獣使い」 [DM24-EX4]

競技最前線!BESTシリーズはこちら

愛感謝祭 ヒロインBEST

トレカ(デュエルマスターズ)【BOX】デュエル・マスターズTCG 愛感謝祭 ヒロインBEST [DM25-EX1]

最新弾(パックを剥きたい方はこちら!)

邪神vs邪神II~ジャシン・イン・ザ・シェル~

トレカ(デュエルマスターズ)【BOX】デュエル・マスターズTCG 王道W 第2弾 邪神vs邪神II~ジャシン・イン・ザ・シェル~ [DM25-RP2]

邪神vs邪神 ~ソウル・オブ・ジ・アビス~

トレカ(デュエルマスターズ)【BOX】デュエル・マスターズTCG 王道W 第1弾 邪神vs邪神 ~ソウル・オブ・ジ・アビス~ [DM25-RP1]

アドバンスを始めるなら断然これ!

天下夢双!!デュエキングDreaM2024

トレカ(デュエルマスターズ)【BOX】デュエル・マスターズTCG 天下夢双!!デュエキングDreaM2024 [DM24-EX2]