本記事は、デュエル・マスターズ プレイス【公式】(以下デュエプレと記す)よりツイートされた、《ダイヤモンド・ブリザード》を使用したデッキに関して調査を行っていると言及したことについての一考察になる。
なお、該当ツイートを以下に引用する。
【ゲームバランスの調査に関するお知らせ】
現在、《ダイヤモンド・ブリザード》を使用したデッキがゲームバランスに与えている影響について、調査を行っております。
調査が完了次第アプリ内お知らせ、公式サイト、並びに公式Twitterにてお伝えさせていただきます。#デュエプレ— デュエル・マスターズ プレイス【公式】 (@dmps_info) April 27, 2020
目次
《ダイヤモンド・ブリザード》について
《ダイヤモンド・ブリザード》はデュエプレ第3弾「英雄の時空」に実装された新規SRカードである。
これまで非常に強力なリソース源となるカードは《アストラル・リーフ》や《アクアン》といった水文明のみのカードであったが、前者は進化元の脆弱性、後者は手札補充枚数の不安定さといった問題をそれぞれ抱えていた。
対して《ダイヤモンド・ブリザード》は豊富な進化元や安定したスノーフェアリー回収、そしてこれまであらゆるカードに許されていなかったビッグブーストなど、既存のカードと比べて破格のスペックであることは間違いない。リリース翌日には「《ダイヤモンド・ブリザード》が非常に強いらしい」というのが、デュエプレユーザーの共通認識になりつつあった。
本サイトでも、リリース日の翌日に《ダイヤモンド・ブリザード》を軸としたデッキに関する記事を執筆している。
参考:
【デュエプレ】冬の女王、襲来
そうした状況を鑑みて、デュエプレ公式側も調査を行っている旨のツイートをしたものと思われる。
“調査を行っている”とはどういうことか
ハースストーンやシャドウバースといったDCGでは強すぎるカードの下方修正(通常、ナーフと呼ばれる。以下ナーフと記載する)を行う場合があり、これを念頭に置いた調査であると思われる。
では調査とは一体具体的に何の調査を行っているのだろうか。
これは推測になるが、恐らくは「使用率」「勝率」といった数字の調査を行っているのではないだろうか。
例えば先述したシャドウバースに於いてはこの2つの数字を根拠にナーフを実施している。以下、シャドウバース公式HPより引用。
■変更の内容と経緯
「ローテーション」フォーマットについて、第16弾カードパック「ナテラ崩壊」正式リリース後の高ランクユーザーの対戦データを集計したところ、『機械エルフ』(《螺旋の鉄腕・ダミアン》と機械・カードを組み合わせた攻撃的なデッキ)の勝率が61.2%(1位)、使用率が31.5%(1位)となっており、『ディスカードドラゴン』(《波濤のプレシオサウルス》と「手札を捨てる(ディスカード)」カードのコンボを中心にしたデッキ)の勝率が55.8%(2位)、使用率が5.2%(4位)となっていました。また、勝率3位以下のデッキタイプに大きな問題はないと確認いたしました。以上のことから、『機械エルフ』『ディスカードドラゴン』の中心となるカードを変更する必要があると判断いたしました。各デッキタイプでの採用カード枚数と勝率への寄与度を参考に、下記の変更を行います。
シャドウバースが高ランクユーザーのデータを元にしているのは、RAGEなどの競技性を指向しているからだろう。
ところで最初に引用したツイートには数多くのリプライが付いており、その中にはナーフを求める声は非常に多かった。
つまるところ、この“調査”でナーフを期待しているということになる。仮に調査の結果、《ダイヤモンド・ブリザード》は環境相応のカードという結論が出た場合、ナーフを求める声に対する説得力のある説明が求められることになるだろう。
だがこの説得力のある説明とは非常に難しく、そういう意味ではナーフされる可能性は比較的高いのではないだろうか。
ナーフについて
ナーフは何故行われるのか?
ではそもそも何故ナーフとは実行されるのだろうか。基本ではあるが、ここで一旦立ち返っておきたい。
- 環境上に非常に高い「勝率」を誇るデッキが存在し、それに対抗する手段が非常に少ない場合
- 特定のカードが使用率を高めることで、何かしらの弊害を発生する場合
- ユーザー側からの強い要望がある場合
1については、一番にイメージしやすい事柄だろう。
ただし個人的には必ずしも「一強環境(ユーザー側の共通認識の中に“いま強い”と思われているデッキが一つ)」が悪だとは思っていない。強いデッキが明確である場合、対策を施しやすいからだ。
問題は一強デッキに対して対策する手段が少ない場合や、余りに勝率が高すぎる場合である。
例えば先日、ハースストーンでは特定カードのナーフが発表された。リリースの翌日のことである。この時それを使用するデッキの勝率は7割にも登り、勝つためにはそのデッキを使うしかないという状況であった。ナーフは妥当と判断すべきだろう。
参考:
「ハースストーン」新拡張版「灰に舞う降魔の狩人」、史上最速ナーフを実施
《ダイヤモンド・ブリザード》がこの1に該当すると判断された場合、ナーフが行われることになる。
2については、少々特殊である。
例えば「このデッキが流行ると、ゲームスピードが猛烈に遅くなる」「このデッキに対応できるカードはAしかないため、Aを使えるデッキを使うしかない」といった場合が、これに該当する。
また「このカードが生きている限り、他のカードがその劣化になってしまう」という場合も、ここに該当するだろう。
ちなみに、これについては1と合わせてアウトと判断されるケースも多いだろう。例えば紙のデュエマの【赤白ジョバンニ】は1であり、2でもあった。デッキそのものが強力な上に、ブーストのないデッキを環境から一切排除してしまったのだ。歴代の凶悪デッキは、だいたいこの1+2の合わせ技である場合が多い。
3については、少々判断の分かれるところである。
基本的にユーザーの不満が溜まればユーザーをゲームを離れていくので、ユーザーの希望をある程度聞く必要がある。
ただしユーザーがゲームを作っている訳ではないので、当然ながら全ての要望に応じる訳ではない。
またデュエプレがどのようなゲームを目指しているのか、という点も重要だろう。即ちデュエプレは競技的なDCGを目指しているのか、それともライトユーザー向けのDCGを目指しているのか、で対応が変わってくる。前者であればより競技的な(つまりマスター以上の高ランク帯)の情報をメインに調査をせねばならないだろうし、後者であればある程度下のランクも含めて調査を行うことになるだろう。
ブリザードのナーフに対する懸案事項
一方で、今回のナーフに当たっての懸案事項もいくつかある。
- 上記のツイートがリリースからわずか4日後の出来事であること
- マスター帯では非ブリザードデッキも多く、またオンライン大会などではブリザード以外のデッキが結果を残していること
- 《ダイヤモンド・ブリザード》を前提として環境を構築していた場合、ブリザードのナーフによって他のカード(具体的に言えば《無双竜機ボルバルザーク》)が強くなりすぎる事態にならないかということ
1については「時期尚早」という観点である。調整段階で開発側が期待しているデッキタイプが登場していないかもしれないし、そもそもリリースからわずか一週間程度でナーフを実施した場合、開発側の手腕に疑問符が投げかけられることになる。
ただこれに関しては前述したシャドウバースもハースストーンも直近で短期でのナーフを実施している(もっともシャドバにはプレリリース的なのが存在するが)ため、それほど考慮されない場合はあるだろう。
2については私の主観を含んでしまうが、マスター帯で数十戦こなしたがブリザードデッキは3割ほどであった。環境トップのデッキが全体の3割ほどというのは比較的妥当な数字と私は考えているが、これは開発側の判断だろう。勿論この数字は私の対戦した相手であるので、実数値を反映しているとは限らないので、予めご留意いただきたい。
ただ聞いた話によるとゴールド帯やプラチナ帯はブリザードが非常に多いという。
様々な要因があると思うが、「とにかく早く勝利を積み重ねたい」と判断した場合、ブリザードを選択しやすい傾向はありそうである。また、マスター帯プレイヤーのように環境に合わせてデッキを変えるような資産的余裕がない場合は、どうしても一番強いカードであるブリザードを作成し、そのデッキを選択せざるを得ないのかもしれない。そういった意味では、ブリザードしかいない、という状況は生まれやすくなる。
3に関しては、もう少し別な観点を含んでいる。
要するに「ブリザードというデッキがある程度流行ることで、特定のカードの大流行を抑制している」と開発段階で考えていた可能性が否定できないという点だ。
より具体的に言えば、《無双竜機ボルバルザーク》の脅威である。
《ダイヤモンド・ブリザード》の速度によって《無双竜機ボルバルザーク》のデッキをある程度抑制している可能性は高く、ブリザードの再調整を誤った場合、今度はボルバル一強環境になる危険性を孕んでいるだろう。
デュエプレ固有の問題点
また、デュエプレにはデュエプレ固有の問題点がある。
それが、カード生成コストの異常な高さである。
仮にブリザードを4枚生成する場合、SRを16枚砕く必要が生じる。そのSRの輩出率はわずか1.5%。単純計算するならば、1624枚のカードを剥く必要があり、イコールで324パックになる。ちなみに1パックは基本料金が150ジェムなので48600ジェムになり、つまり5万円である。
もちろんこれは直にブリザードを当てる可能性や、他のレアリティのカードを砕くことを一切考慮していない数字ではあるのだが、極めて高いというイメージは共有できた筈だ。
つまりSRを安易にナーフすると、それだけユーザーの資産は目減りし不満は高まる可能性を孕んでいる。ある程度月日を経て上でなら納得も出来るが、わずか一週間でなると減価償却出来たとは言えないだろう。
ちなみに補償については「分解コストを生成コストと同等にする」といったようにシャドウバースに倣う可能性が考えられるが、生成コストをシャドウバースに倣ってはいない以上は筋が通っているかと言われるとやや疑問である。
この際カード生成コストに関しても見直して欲しいところだが、本記事の趣旨とはそぐわないためここでは省略する。
おわりに
最後になるが、仮にブリザードをナーフするとなった場合、どういった対処になるだろうか。
まず前提として、前述の懸案事項を鑑みるに「全く使えないカード」には出来ないだろう。環境である程度の強さを保った上で、弱くなるというのが理想だ。
具体的にはマナをタップインにする、回収出来るゾーンを調整する、回収やブーストの上限を設定するなどの対処は考えられる。或いは、ブリザードそのもののコストを上げるケースもあるだろう。
ここについては開発側の調整力に期待するしかない。
本文は以上となる。
本記事の内容が、各人の考察の一助になれば幸いである。
神結